理事長メッセージ

理事長 佐野 督郎

 ドミニコの朝の庭は美しい。「マリア様おはようございます」と、ルルドのマリア像に幼稚園児が元気な声であいさつをしている。小学生がその横を通り、階段を下りる園児に手を差し延べている。朝練を終えたのか、中高生が汗を拭きふきその風景を眺めている。それは「愛し、愛されている」という人の実存そのものとして最も大切にされなければならないものが感じとれる風景であり、「一人ひとりを大切にする」ドミニコの教育の手ごたえを実感する風景でもある。
 聖ドミニコ学院は1953年聖ドミニコ女子修道会によって設立されました。その淵源の聖ドミニコ・ド・グスマンは12世紀、スペインのカレルエガに生まれ、カトリック説教行脚者としてヨーロッパ中を旅した聖人です。特に説教は説得ではなく「対話」で行われ、異端の宿屋の主人を一夜にして翻意させたというエピソードがあり、そんなドミニコのまわりに集まった人たちによりドミニコ会が1216年に設立されたのです。
 聖ドミニコ学院の教育理念は、一人ひとりが神の祝福にあずかっているかけがえのない存在であることを最大限に尊重し、一人ひとりの園児、児童、生徒がこのことを日々実感する教育活動を行うことを基本においている。また、同時に他者も同様の存在であり、人は支え支えられて生きる存在であることを知り、カトリック精神の実践によって愛し愛される存在であることを認識することのできる教育活動を行うことも基本においている。当然のことながらこれらのことは揺るぎないものであるが、社会の変化に対応できる人間力を涵養することも一人ひとりが幸せな人生を送る上では大切なことであると考え、そのための教育課程を用意している。
 夕方、エスペランスの鐘の鳴る中を子供たちは聖堂の中の長い通路を通って帰って行く。この間の数分こそが一日の自分を振り返る大切な時間であり、一日の自分の成長を確認する時間でもある。
 自分は愛されている存在であり、お互いがかけがえのない人生を送っている尊い存在であることを園児、児童、生徒が実感することを、同窓生が、後援会が、全職員が心から願っている。このようなドミニコファミリーとしての温かい風が日々吹いているのが聖ドミニコ学院である。

2023年7月
学校法人 聖ドミニコ学院理事長  佐野督郎